◆脈診の見方に八網弁証を照らし合わせる

八網弁証とは、陰陽、表裏、虚実、寒熱の八つの事である

〇脈が打っているか否か

〇全体に、気に、力があるか否か

〇硬い脈とか柔らかい脈とか中空脈とかの有無

〇浮中沈の脈状を診る

〇寸関尺の脈状を診る

〇全体的にどういう脈状になっているのか(平脈との違いを診る)

〇全体的な脈状と硬い、柔らかい、細い、ぼやけている、とか形を診る

〇寸浮、尺沈との関係を診る

〇その形は塞がっているのか、籠っているのか、滞っているのか等、弁証する

〇症状を聞いて、その形を証明する

〇脈体を判断する、勢因形顕来去をみる


◆形勢

長短

寛窄

剛柔

・薄厚

・粗細

高深


~臨床例①~

患者:30代男性、吐き気、嗚咽、低血糖

 

院:まず脈でなにをみるか。陰陽の量、虚実の量、そして質。量は多いのか少ないのか。実に対しての虚の量。まず陰陽から。陰陽は陰虚陽実、陽虚陰実。熱でも口乾く、表でも乾く、裏でも乾く、陽虚でも乾く、陰虚でも乾く、冷えでも乾く。病理は絡んでる。一番大事なのは量とか質も大事だけど、絡まっているわけ、絡まっているってことは両方の要素を持っている。これら(陰陽、表裏、虚実、寒熱)は全部要素の問題。では、要素は?51%で口乾く、40%は乾かない。30%なら40%より乾いてこない。

まず、寸浮を診る。穏やかに打っているのかどうか。要素だから色々絡まっている。正常な脈なんてない。40代50代60代70代80代90代になっているほど、歳とるごとに絡まっている。寸浮、まず脈打ってる、生きている証拠。寸浮押すと段々固くなっていく。下まで、寸沈押すと関に流れていく。尺部押すと段々固くなっていく。沈めて、さらに沈めて骨まで押してもまだある。固く細くなって。女は右、男は左、これはまず捨てる。そっちに置いておく。あくまでも左手「心肝腎」これは先天の精。右手「肺脾腎」これは後天の精。そうすると先天の精が後天の精より勝っているかどうか。尺沈、左手のほうが弱い。そうすると精気不足だということ。右手は骨の所まで押してもまだある。左手は骨の所まで押して細いのが肘の方へ流れる。さらに押すと骨の所押して、出てくるけどぼやけている。骨の所で出てくるってことは、骨の所でたまっている。たまるということで、一つは籠ってる・塞がっている。平脈からどんどん離れていく。塞がっている、籠っているものあったら熱火する。

寸浮が手首の方に伸びている。浮きすぎている、そして上っている・上がっている、どちらでも良い。平脈とは逆の方にいこうとしている。これは何を意味しているか?そして一番は尺部。尺と関の関係、尺と寸の関係。意識高めてゆっくり押して、寸浮より関、関より尺の浮。尺は少し下がっている。だれもが平脈から逸脱している。関浮が始めから目立つならこれは胃のこと、胃腸の問題。胃実証。だから一つはゲップした。さらに関だけ浮きすぎている。だから症状出てきてもおかしくない。胃の問題だとしてゲップ、嗚咽。これはどうゆう事を意味しているか?関は目立つ、こうなったから脈ではこう教えてくれるけど、そうではない。これを作り出した元がある。嗚咽を作り出した元がある。その時に左尺沈から左寸浮へいく。左寸浮から右尺沈、右尺沈から右寸浮、右寸浮から左尺沈へいく。そうすると、この脈は右尺沈、けっこうはっきり打っている。骨の所まで押してもまだある。そしてやわらかい。ここで関浮いている。だから嗚咽ある。これは置いといて、胃だったら「おだやか」「やわらかい」これはある。ということは今は胃の問題ではないということ。胃気だから。そうするとやわらかい脈が寸関尺どこにあるのか?全体的にはやわらかいが、やわらかさない所どこにあるのか?右寸浮から浮中沈、寸沈の所に段々と関に流れる前にまだ人出し指の腹に残っている所でしごくと、やわらかさがあるけれど固さもある。そうすると肺の実だということ。肺の実証あるから、肺と胃は一緒には働かない。

咳込むのは朝か?痰は?

 

患:午後5時過ぎ頃、声かすんだり、痰からんだりする

 

院:午前は?

 

患:ない

 

院:ないならいい。肺の排毒時間は午前。もし症状午前にあるなら極まったやつ。肺の要素が夕方に表れている。夕方は腎の排毒時間。そして左尺沈、先天の精不足。後天の精はある。でも溜まっている。これを平脈に近づける・もっていく。一番下がっている所、右尺沈。左寸浮ない、目立つ所は関脈。弾んでいるかどうか、まず一つは心。寸関尺を意識して浮中沈、そしてやわらかさを診て、そして弾むかどうか。胸苦しくなるか?

 

患:腹辺りが苦しくなる。

 

院:先天の精気不足だから左は全然弾んでない。右の尺沈でない、左の尺沈で診る。そうすると心とか肺とか腎とか分かった。そうすると何が溜まっているのか。尺沈はっきりと籠っている。塞がっているのは骨の所までまだあるということは、何か?下がる性質持っているのは冷え。ということは寒邪があるということ!!冷えているのは手足の裏。胃腸に負担かかっているから苔は白。青、だから冷えある。舌、表と裏の明るさ違う。裏明るい。ということは裏証になっているってこと。裏証を弁証すること。だから冷え。そうすると冷えは下焦。冷えがたまるということは気は滞る。邪気によって気は巡らなくなる。邪気入るから。だから上焦(みぞおち)押して柔かい、中焦(臍上)押して柔かい、下焦(臍下)押して固い。溜まるから滞る。だから脈とって腹張りませんか?張ってますね。そして冷えている所探す。押すと下っ腹冷えている。必ず労宮で触る。下にいくと完全に冷え、そして腹押すと咳込む。気滞を動かす。気を動かすから、気を主る肺を使って咳込んで教えてくれる。そうすると、どこ治療するか?そこで初めて症状は?と聞く。

 

患:2日前から食後に吐き気と嗚咽。一番辛いのは21時~22時30分頃。夜中に低血糖起こした。

 

院:身体は騒いでる。実だから。実を瀉さないといけない。一つは寒邪。一つは気滞、実、咳、嗚咽は上に上がるか?

 

患:はい

 

院:食べたもの出てくるか?

 

患:ない

 

院:あと何?実は?寒邪、気滞、痰は?

 

患:からんでいるのは分かる

 

院:胃で作られて肺に溜まる。肺と胃の関係。病理だから生克。心もある。でもやわらかさある。胃より肺の実証。一つは寒邪、気滞、痰化したもの。痰からんでいる。一つは虚の要素ある、一つは寒邪、一つは気滞、一つは痰化。その痰はどこ?痰はどこで作られる?痰も実。次、虚のことは?実が生まれるってことは虚がある。虚熱だから症状聞く時「急に」実と絡んでいる虚だから「急に熱くなるときは?」虚熱ある人は、風呂入ると疲れる。長風呂出来ない。口乾く?

 

患:乾かない

 

院:いや、唇乾いている。自分でも乾いていること分からない。実熱じゃないから。治療は虚を補するのでなく実を瀉す。全部嗚咽、ゲップ、夜。次関、虚あるんだから必ず関やわらかい。3本だと脈の中あるの分かるけど、単指だと中ない。中ないってことは虚になっている(右関)。そうすると胃実と虚の要素。肺でも胃でも実の要素が待ち構えている。あくまでも木火土金水。自然の流れに従っているか。陰陽の対極図に当てはめて。陽は昇る、陰は降りる。夕方の17時頃症状出てくるってことは陰の問題、あくまでも対極だから陽も考える。

私は実を瀉すことはしない。全体的にやわらかいから。虚を補う。どこを?腎陽虚、復溜。一つは陽気が関に流れている。寸浮ない、右の寸沈全然ない。腎陽虚、陽虚を補ったらどうなるか?鍼刺して響いたら言って。ゆっくり響かせる。胃気はある。響いたら出てくる、尺沈、深い所にあったの浮いてきて、左寸浮はっきり。だから朝、腰痛かっただろ?

 

患:はい

 

院:これで99%治療終わり。質問は?

 

ス:要素、虚実の数の多さではなく、あくまでも今の脈を診て治療した?

 

院:そう。実そのものはそんなに表れていない。虚の方が多い。実は時間を使って悪さしているだけ。あとは全体的に虚。尺沈があるかないか、寸浮あるかないか、寸浮どういう打ち方、固いのか太いのか、浮きすぎてるのか、沈めて寸沈あるのかないのか。寸浮は気の問題、寸沈も気の問題だけど血とも絡んでいる。

 

ス:鍼刺す前は病理で脈診た。鍼刺して変化した、そしたら生理の見方で診る?

 

院:そう。治療して脈変化した、生理の見方でしっかり働いているのか。治療して翌日どうなっているのか。さっきより口潤ってないか?

 

患:はい

 

院:陽虚だから冷え。冷えとはそういう全て、実も陰実、陽実、陰虚、陽虚全て冷え絡む。表証裏証全て。溜まるべき所に溜まる。脈表面硬くなって上に昇ろうとする。左手は先天の精だからそんなに変化はない。(脈とって)固くなってきた、ということは昇ろうとしている。

 

ス:これは瀉してはいけない?

 

院:だめ

 

ス:2手目が大事だとよく言ってると思うのですが、やはり表面の固さより尺沈の方が大事?

 

院:そうそう。尺沈弾んだら枝葉の治療出来る。いつ一番嗚咽?

 

患:午後21時~22時30分頃、止まらない

 

院:結構勢いあるね。今一番の悩みは?

 

患:身内のこと

 

院:気は昇ろうとするから右から左へ。今一番はあなたの心配事を解決すること。あなたの思いがあなたの身体を悪くしている。考えても考えないこと。それには発散。発散する食べ物、始め「甘いな」と思って食べたら辛い。例えばニラ・玉ねぎ・金柑(きんかん)。食べ終わろうとした時、辛み感じる。これが気の発散。ネギ少し焼くと甘み出てくる。

そして次の鍼、中丹田ゲップとか吐き気に使う。寸の浮がどんどん寸浮出てきたらそれで終わり。肺の陰陽が廻ったってこと。陰陽絡んだら終わり。金柑一日3個、食前のおやつとして。

 

 


~臨床例②~

患者:20代女性、元々アトピーで季節によって症状変化する。目の周り、赤み・痒み・乾燥

 

院:あくまで八網弁証に従って診る。症状聞くと先入観が出る。だから初めに症状聞かない。その都度脈でおかしいと思った時にそれに合っている可能性の高い症状を聞く。唇乾くのは口乾く初期の段階。脈打って気があるのか、ないのか。全体的に脈をとる。高速道路3車線が2車線になっていないのか、リズムがあるのかどうか。リズムが一番大切。それは生活リズムと同じ。気あるのか、リズムはあるのか。次に固いやわらかい、穏やか、弾むのか、色々考える。そして浮中沈寸関尺そして全体的に三角形なのか逆三角形なのか、全体的に固いのかやわらかいのか。この患者は全体的に固い、表面固い、固いのはなにか。その時に寸の形を診る。寸の浮、中沈、陰陽、八網弁証だから陰陽、表面固いが浮きすぎではない。でも寸の浮けっこう浮いている。寸の浮中沈、単指で関の浮中沈、尺の浮中沈そして全体的、単指で診た時と3本で診た時の固さどっちのほうが固い?

 

ス:3本です。

 

院:そうすると陰陽が絡むと固さが出てくる。だから陰陽の問題があるということ。陰陽絡んで決めれば決める程固さがはっきり出てくる。どういう意味しているか。浮いている寸だけ、関にない。冬から春にかけてどんどん発散しようとしているのに固さでてくる。弦の中に固さあったら、固さの中にやわらかさが出てきたら良いけど、固いなら固いまま。固さの中にやわらかさがない。これは冷えだという事。沈滑、滑脈。

 

ス:沈滑あって、こもっていると判断出来ないのですか?

 

院:全体的に寸関尺浮中沈をみて下に沈めば、沈めるほど固くなることは下がっているのだから冷えのこと。舌、暗い舌の先黒、瘀血の要素を持っている。だから脈に瘀血があるのかどうか。瘀血は気虚から作り出す。気滞から作る。高速道路3車線が時速60kmで均等に走らないといけないのに、前方に障害物があったならば、その障害物の先1車線しか通らないのは気虚。気虚の影には全体的に、ノロノロ運転するのは気滞、気が滞っている。完全に滞っているわけではない。完全に滞ったのは瘀血、だから気虚と瘀血は繋がっている。気滞から気虚、障害物も瘀血、動かないから。脈体を診る、脈体を判断する。どこが勢いないのか、勢いは幅広幅狭・薄厚、固いやわらかい、太い細い、そして陰陽、来去を診る。来速いけど去遅い。だから陰虚。そしてどういう症状?

 

患:目の周りは痒くない、体幹も少し掻くとおさまる。でもまだある。臭いにかなり敏感になり、ちょっとした臭いで鼻が痛くなる。酷い時は頭痛までする。

 

院:音でも頭痛するか?

 

患:しないです。

 

院:目は?

 

患:明るいのは気になる。

 

院:テレビの様な鮮やかなのは?チカチカするのは穏やかではないからな、穏やかでないのは気を乱す。あなたは臭いで気を乱した。気を乱して頭痛まで発展した。では気を乱しているのはどこか?虚から乱れたのか実から乱れたのか?まず表面固いのだから一つは気のことを聞かないといけない。気分は?一番大切なのは「眠る」「食べる」「動く」この3つ。全部気分。気分が塞がっていると朝起きて、陰中の少陽が頭に伸びない、朝起きて頭は?

 

患:重い、眠くて起きるのつらい。

 

院:その二つだけでいい。そうすると気分は塞がっている。塞いでいるのは何か?その元はどこの気分。寸関尺浮中沈全体的に大雑把に脈とって、陰虚は分かる。来去の去の方がないのだから去が弱い、どこの陰虚か?朝昼夕夜、いつの時間が一番痒くて気分がすぐれなかったりするか?

 

患:夜

 

院:他の症状は?

 

患:帰り道に右耳だけ熱くなる。家帰ってほっとすると痒くなる。

 

院:気鬱なら全体的に固さが、寸関尺にわたって固さが分かる。これはもう気鬱。気鬱から陰虚作っている。

 

ス:先に瀉す?

 

院:そう、気を作り出すのは胃だから、気をおもむろに押すと(腹押す)上にいくほど、膻中あたりで苦しい。少し押すだけではっきりと固い、でも上にいくとやわらかいけど一番押されたくない。胃に関することだから、瀉すことは三里でも豊隆でもいい。足の陽明胃経。でも内庭、ゆっくりと刺す。浅い所で最初響かせる。響いたら気が集まって、さらに深い所に刺す。そして瀉。気分晴れたら固さはなくなる。柔らかくなり穏やかになった。でもまだ尺沈が融和されていない。尺沈が関の方へ流れている。まだ陰陽絡んでない。陰陽が絡んだら指の真ん中で打つよ。元々痒みは定着したもの。身体に定着したもの。定着したものは病にリズムを持っている。だから今の時期にこういう症状出てくる。夜右耳だけ熱くなる。痒みは夕方、時間に表れる。決まった時間に表れてくるかどうかを照らし合わせる。症状聞いてその形を証明する。瘀血だからな、まだ指の腹で打っていない。はっきりと瀉す。次は枝葉の治療、寸の浮がけっこう浮いている。寸関沈めると三角形。量の問題、次はやわらかさが表に出てくるようにする。来去、陰が盛んになってきたけれど、まだ弱い、まだ去弱い。陰の代表的は肝だけど胃もそう。耳が熱い時咳込みは?

 

患:ないです。

 

院:臍の上に固いのあった。固い所押すとむせる。さっきよりは腹押せるようになったけど。去は良くなった。今度はこれを平脈の方にもっていかないとならない。浮は良いが尺沈がまだ深すぎる。深いのは臍から下が深い。臍から上が浅い。だから臍から下の穴を使う。三里、細い鍼では届かない。中国針を使う。ひとつは瀉、ひとつは補。大切なのは補ったということを体に提示する。最初浅く響かせる。身体はどう思っているか分からないけど、こちらの意図としては瀉すこと。色々表れる時間が定着しているから、まず脈が穏やかになったならば尺沈、ぼやけてきてる、右は尺沈やわらか。左尺沈固い、これをやわらかくする。三里瀉す。これで尺沈やわらかくなった。変化したら終わり。舌が明るくなった。身体は「陰陽の乱れが病気」なのだから、陰陽が絡んだら乱れがなくなってきたという事だから症状は改善される。