2016.10

スタッフAを弁証

10日前から咳込み、声が枯れる。最初の3日はそうではなかったがその後の7日間は痰がからむ。

 

 

院:痰がからむ、どこにたまっている?どこにつっかかっている?

患:上の方、あと首を右斜め45度くらいにしてつば飲むとひっかかる感じがして痛い。

院:その角度で痰でそうか?

患:いいえ。

(あーーーーと声出してひっかかりあり、痛みなしを確認。)

院:痰がからむ、という表現をしたがそうではない。痰は胃で作られる、たまるのが肺。肺にたまっているから痰が出てくる。肺の宣発がうまくいかない為に何回も宣発させて、粛降させよう下そうとする。でも基本的に胃で作られた痰が心肺の気化作用で肺にたまるってことは、脾胃の運化作用が低下したってこと。運化が出来ないから肺にたまる。だから一つは脾胃の運化低下、ということになる。痰がからむ=脾胃の運化低下、そして心肺の気化低下、と分析できる。/そして声が少しおかしい。これは胃ではない、肺の問題。確かに端的に言えばそうだが、そうするとお前らは声=肺にしてしまう、違うからな。体から出るもの、皮膚から出てくるものというのは、何が考えられる?

ス:心のこと。

院:そう、心は神を主る。「神の広義は人体生命活動の表れ、人体の外観・顔色・目つき・言語・応答・四肢の動き・姿勢、全て神の範囲に属する」心は肺はセット、つまり心の問題も考えないといけない。心肺不和かもしれない、だから心のことを聞かないといけない。動悸や胸で痛くなったりしたことは?

患:一瞬胸の真ん中が苦しいんだか痛いんだかした。動悸はない。圧迫感もない。

(脈をとる。)

院:心肺だから、寸だけ、尺沈なんか見なくていい。症状は上のこと。寸の浮、そして浮の位置にある寸関尺、全体の浮脈だな。押すとなくなるのか、始めやわらかくて段々硬くなるのか。

(時間かけて脈とってから)

院:心肺不和とかではない、寸の浮は魚際まで伸びていて有力。寸関尺浮中沈いたるところに弦がある。尺沈は力なし。答えから言うと風邪引いてる。風邪のピークは咳が出始めた10日前のその前だな。痰という病理産物が生まれているんだ。熱感は?

患:時々顔がほてる感じがある。昼13時と夜21時くらいに急に暑くなって汗ばんだりする。夜は足出して寝てるけど朝はすっぽりかぶっている。

院:今この体での問題は右尺沈がけっこうある、左尺沈はどんどん弱くなっていく。邪正の勝った負けたで寸に集まっている。だから寸の浮に弦がある。これは瀉さないといけない。そして尺沈にも弦があり、滑も混ざっている、尺沈弦滑。この弦滑をとらない限り、陰から陽、尺沈から寸の浮。陰が勝って陽が逃げている訳だ。だだ弦滑にしては細い。それは何かと言うと下焦の痰熱のこと。だから腹押して上中下焦のうち下焦に硬さや押されて嫌な感じがあるだろ。

(下腹押す、嫌がる上腹はそうでもない)

院:ってことは、治療するのは?押している力はどこから来ている?肘から手首、骨から表に押している。弦は一つは肝。そそいて右尺沈は弾んでない。弾まないのは神気のこと。そうすると、肝から心が生まれるのに、神気が生まれない。肝の実だ。大敦三陵針、血を出す。血を出すことは瀉なんだけど、血が出ることで気が動く。

 (スタッフに一名が三陵針刺す、血が出ない。)

院:気が動いてないんだ、ただ刺しただけで血が出るはずないだろ。下から押されて肘から押されてるんだぞ。(尺から寸に、沈から浮に)陰が勝って陽が身動き取れないんだぞ、刺した後にしぼれ。

(しぼって血が出る)

院:血を動かすのは気。血が出るということは気が動いた証拠。

(尺の脈が太くなり、よって寸の弦がなくなる。)

患:いろいろ楽になった。あと膝周りがスーッと楽になった。

院:膝は肝の府。厳密に言えば膝は肝腎の府。腰は腎肝の府。肝腎同源だからな。府という概念、これは集まる、だ。膝は肝経の阻滞があれば動きが悪くなる。だから府とは集まる、流れる、の意味。集まる事は流れる事になる。

 (首傾けての喉のつかえなし、声出してつっかかりなし)