2016.12

患者:30代女性

症状:左側頭部にはりつく痛み、目と口の渇き。喉元に何か詰まっているような感じだが痰は出ない。食後腹が張る。便秘、生理痛、腰の痛み、足先の冷え、寝つきが悪い、花粉症。

 

院:左頭の痛みはどうすると強くなる?頭下げた時とか。

患:イライラすると強くなる。目の渇きは夕方~夜にかけて、渇くってよりはしばしばする。風にあたると耳鳴りと、頭がツーンとする時がある。

院:夏と冬では?

患:秋口から強くなっている。口の渇きも夕方から。あと物を食べた後。

院:何をすると渇きがなくなる?

患:水を飲む。一回ではだめ、2、3回は飲む。あと手のひら(小指球全体)が前々からだけど荒れる梅雨の時期から出てきて今が一番ひどい。

院:それはいつから?

患:中高の時はなかった、働き始めてから。喉は空気が詰まっている感じ。食べると張るのは下腹。胃のあたりも朝起きた時にボテッとしている時がある。

院:お腹すくか?

患:空くときと空かない時がある。便秘は3日に1回。

院:だんだん年寄りになってきたな。

患:生理の時、下腹部痛。初日になる。二日目からは下り坂。

院:最初なら気の問題、後半なら血の問題。初日の前はどんな状態?

患:下腹、胸、腰が張る。

院:生理痛で下腹痛い時、そこを押すとどうなる?

患:おさえると楽。

院:では虚だな。足で痛いところは?

患:歩いていて左膝内側にチクッとする時がある、春になる。

院:もうわかったな?

ス:・・・。

院:手のひらはかゆくなるか?

患:生理前に。出血すればかゆいのおさまる。

院:かくと気持ちいいか?

患:夜寝ながらかいてる時がある。かくとすーっとする。

院:他にどこかかゆくなるところは?

患:たまに膝裏。

院:根っこだな。

ス:脈は関脈けっこう目立つ。数脈、やわらかいんだけどけっこう勢いが強い。

院:体の中に久病があるんだから、それを頭に入れて脈とらないと、花粉症なんかも久病だ。頭に張り付いてるのはなんだ?いつからだ?

患:今年に入ってから、ずーっと長い、寝つきが悪いのも長い。

ス:朝起きた時口の中はどうなっている?

患:時々ねばねばしている、そういう時はたいてい胃がボテッとしている。秋から顕著になったけど、前からちょくちょくあった。

ス:立ちくらみは?

患:急に起き上がった時にある。

ス:耳鳴り?

患:一日中あるときもある。

ス:腰は痛い?

患:夕方重い。ずっと座っていると動くときにグーッと伸ばしてから。

院:淡白舌、ヒントは営血不足。生理になるとたちくらみ起こすだろ。

患:はい。

院:脈は沈細、本来は数脈じゃないといけないのに遅脈。夜寝てて口かわくだろ。

患:寝る前にかわく。

院:足のほてりは?

患:ある。

院:朝、喉痛むか?

患:痛みまではいかない、ガラガラするときがある。

院:ってことは声がかれる時があるな?

患:ある。

ス:一つは血虚内風、一つは腸に湿熱がたまっている。

院:うん、だからそこまで行く過程が重要なんだ。その為に浮沈数遅がある。浮は、沈は、おそいはやい?

ス:浮は浮いてて硬い、弦。尺沈は細い、かたい。左はいいが、右は短脈。

院:いや、私が言ってるのは、浮いて硬いから何なんだ?それは何を表現してる?浮は陽、沈は陰と言ったなら、陰陽を使って患者の状態を表現しないと。尺沈骨のところまで押してまだある、これは気の問題か血の問題か?そして六網にわけないといけない。陽病も陰病もどちらも持っている。陽病なら六腑、陰病なら五臓。ではまず六淫病から行こうか。風寒暑湿燥火の中で何がからんでいる?脈は浮中沈押していくほど硬くなる、これは大切なこと。そして左の脈は最初に関脈が目立つ。右は寸関が目立つ。全体的に細い。呼吸もけっこう荒い、ゆっくり呼吸出来てる時とはやい時がある。一定の呼吸ではない。六淫から言ったら一つは風、一つは寒、そして燥。風寒燥邪が入ると、体はどうなる。寒と燥は陰邪、風は陽邪、当然下焦の問題が出てくる。だから口がかわいた時、舌のどこが乾燥し始める?

患:喉の奥から乾燥する感じ。

院:つまり舌の奥から、下焦だ。そして寸と関が浮いている。一つは心肺の問題。深呼吸してみろ、どっちが楽だ?

患:吐く時。

院:そうするとここで心肺と肝腎の関係を考えないといけない。舌というのは常に潤っていないといけない、下焦の水はけが悪いから便秘になる。下焦の水質管理が悪いんだ、足が重くなるし、水質管理が悪くなれば気血の巡りも悪くなるから手足の末端が冷たくなる。

(大きく深呼吸した状態で下腹押す。)

患:けっこう痛い。咳でそう。

吐き切った時に押す。

患:痛くない。

(実際に窓から頭をだしてもらい、耳鳴りと頭がキーンとすることを確認。)

院:風に当たると耳鳴りと頭がツーンとするんだろ?これはなんだ、もちろん風を中心として。風寒か風燥か?そして脈は沈細、按じてなくなる、虚だな。でも骨まである細脈があるんだから、実の方向に走る。虚から生まれた実だ。実は患者の症状でどれだ?風に当たると症状が出てくることだ。窓から離れて落ち着けばおさまる。そしてポイントがもう一つ。関脈目立つが、寸沈、関沈、尺沈、押していって関沈にも細脈がある。胃にたまってるものがあるんだ。関沈に滑脈もある。沈滑は食積、食べるとつまる、食べると上がる、食べると熱化する。この食積、沈滑を作り出したのは六淫病。風寒燥邪だ。食積は熱のこと、だから食積の人は寒くても風呂に長く入る事を嫌う、そうだろ。

患:はい、長く入れない。

院:そして耳鳴り。腎気が不足しているとかそういう事ではない。腎に問題を起こしている、脾胃にも問題を起こしている。六網で言うと虚、寒、裏だ。もちろん虚実錯綜、寒熱往来しているから一方だけ考えてはダメだ。刺すのは風府中国針、中脘。

特に風府は響かせる。

院:頭上げてみろ、すっきりしないか?

患:すっきり。

院:これで寸の浮が変化する。尺沈も沈細はなくなる、関沈骨までない、けっこう浮かせて出てくる。

患:さっきより口が潤ってきた。

院:尺沈の来去見てみろ、来が遅くて去がはやい。風府に刺して骨まであったのが浮き始めた。ってことは、沈細按じてなしは陽気不足だから、それがなくなったってことは陽気に力ついてきた、陽気が伸びた。そして風にあたると耳鳴り、基本的に陰虚で耳鳴りはない。耳鳴りは陽虚。治療は陽といったら陰を治療する、互いの協調だから、だから体渓、ゆっくり、強く響かせなくていい。錯綜、往来しているからな。なぜ腎陽虚で耳鳴りが起こる?

ス:腎の陽気が九竅に開くことで機能は正しく行われる。

院:そうだな。腎は陰のこと。陰は血のこと、では耳鳴りを血で表現する?体の中で陽気を確保しようとするから脈はさっきより細くなってきている。沈めるほどかたかったのが均一になってきた。ということは足温まってきたろ。

患:はい。

院:舌は営血不足。だから血海、気海一番針。気海穴は臍下1寸~1寸半、この中に必ずある。ゆっくり刺すこと、先に太渓をさしているんだから、太渓を重んじないといけない。

ス:下腹押してやわらかくなってきた。

院:陽気を確保して、下焦に熱が集まってきた。ということは腸が潤ってきた証拠、便秘のことだ。もし、六淫の燥と寒が体に入ったらまず一番最初にどこを通過する?

ス:口

院:そう、でも心肺の症状がなかった、腎だけ。ということは燥邪が体の中に入って胃、大腸を乾燥させているのではない。舌を見て、下焦にたまっているものがある。冬は寒い、燥邪が入らずとも、寒と燥は一体だから、寒が入ることで燥になる。だから腰が冷たい時があるだろ。

患:ある。

院:風呂とかに入って腰を温めると気持ちいいだろ。

患:はい。

ス:厳密に燥邪が入ったのではなくて、寒邪が入る事で一緒に乾燥した、という事?

院:そう。胃の食積があれば、もう動かないんだ。胃も動かなければ大腸も動かない、だから便秘になる。

患:手のひらの赤いところ、潤ってきた。

窓からもう一度顔を出す。

院:さむけ感じないだろ、体に陽気を確保したんだ。

患:耳鳴り、頭のツーンもない。

(深呼吸して下腹押す、苦しくない。)

 

院:寒と燥は一体。決して別々に考えてはいけない。暑と湿も同じ。全て風が運ぶ、風が運んで寒になる。風が運んで燥になる、火に、暑に、湿になるんだ。もしこの患者、登竜門の胃の問題を解決しないでほっといたら風と邪気が裏に入ってしまう。まだ裏にいってないからよかった、それは沈細按じてなかったから。下にいってるんだけど、まだ行き着いてはなかった。裏にいこうとしていたが、完全に裏に入っていたのではなかった。だから沈細を上にいかせた、そうすれば問題ない。 そしてたまって動かないものを動かしたんだ、花粉症は軽くなる。花粉症は気機の回転障害のことだから。