2016.12

 患者:90代男性、あるスタッフの往診患者であり、方向性の相談。

症状:初期の主訴は背中のつっぱりと足裏のつっぱり感で往診開始。認知症。炭鉱で働いた過去があり、現在酸素チューブ使用。現在の主訴は胸がつまって苦しいこと。

 

ス:最初の主訴は改善した。今年の夏に老人ホームから実家に一週間帰って、またホームに戻ってきた。その時から職員に暴力をふるう様になり、昼夜逆転し、最近はまだら認知に、日中起きている時間も短くなってき、血圧も差がある。現在週2回の往診。脈は寸関尺一本そろうところで保持していても寸が消えたり、関が消えたりする、不整脈もある。過去に脳梗塞も。何を基準として治療してゆくべきか。

院:まず2回では足りない。そして肺繊維症は肺のところにかたまりができるからな、一分間の呼吸は?

ス:浅かったり深かったり。

院:はやいか遅いかで問診が変わってくる。

ス:けっこうゆっくり。

院:肝腎は?

ス:秋におしっこつまってカテーテル通している。

院:吸気は肝腎だぞ、どっちが楽だ?

ス:吐く方です。

院:では肝腎両陰虚だ。そして実家に帰ったら暴力振るう様になった。これをどう理解する?

ス:・・・。今まで定期的に帰っていて問題なかった。今年の夏にいきなりそうなった。

院:一番大切なのはなんだ?時間、空間、生克、臓腑だぞ。夏あつい時、季節が病を運ぶ。家に帰ったからではない。ってことは風寒暑湿燥火の中で、8月、暑、湿、熱。この3つのどれかもしくは複数が絡んでいる。それが原因で暴力を振るったんだ。弦、洪、滑のどれかがあるだろ。そしてあるべき所に脈がない、これは真臓脈の要素。形は陰、勢は陽、形だけ勢だけなんてのも真臓脈だ。胃気神気精気はどうなっている?なくなってくれば死が近づく。あるべき脈がなくてそれで頭を明朗にさせたいなら百会、関元、命門、そして十二井穴どこでもいいから瀉せ。これで打つべき所に脈が打てば命が延びた証拠だ。お前はこの患者をどうしたいんだ?

ス:今は日中寝ているので起きててもらいたい。横になっているではなく完全に寝ているから。

院:起きなきゃいけない時間に寝ている、これは虚。だから治療するのは朝起きた時だ。朝ごはん食べる前。そして脈は常に柔らかさがある様にすること。