2016.12

患者:30代男性

症状:起床時舌がピリピリし腰が広い範囲で重い。起床時や就寝前に左足首がだるくなり動かしたくなる。食後時間がたってもげっぷがけっこうでる。手の指の腹が赤く少しはがれている。

 

患:10日前の治療で三陰交に刺してもらってからおならはとまった。多便だったのが一日一回になった。下腹の張りはなくなったが、げっぷ前より減っているがそれでも一日15回程。

院:舌のピリピリは痛かったか?これは陰虚のこと。

患:10日の間で4日ピリピリした、一回は痛かった。

院:起床時の腰、痛みは?

患:なし。

(仰向けで片足挙上。)

院:30°までは腹筋を使う。30°以上上げると背筋を使う。だから坐骨神経痛でも30°以上上がるなら良くなる。10°20°しか上がらない坐骨神経痛は30°まで上がるようにする。痛みを取ろうなんて絶対やってはいけない。ヘルニアでも30°以上上がる人は手術してはいけない。自分の体の力で良くなる。

患:左足首は急に動かしたくなる、嫌な感じがして。

院:その時足首押したか?

患:押してない。

院:治療家じゃないな。では脈。寸の浮かたい。沈めてまだある。関脈は中はっきり、でも両サイドがぼやけてる。尺脈は骨まで押してもまだある。細脈。沈細はなんだ?

ス:湿痺症

院:そう、ではなぜ湿痺症?沈細が表現するのはその一部として湿痺症。あくまで症状を聞いて、脈をとって弁証するんだ。患者に湿痺症の症状はない。脈は位・数・形・勢。その中でも浮・沈・数・遅。浮沈数遅を無視して形と勢は語れない。浮沈数遅を無視して脈象ばかり追いかけては治療は出来ない。

げっぷ、これは胃の問題。胃という事は、一緒に肺は?げっぷがでる前に胸が痛むとか咳が出るとか。

患:特にない。

院:ではいいな。舌は歯痕、そして青い。気滞と冷え。呼吸数から見ると遅脈。陰のことだ、尺沈を見る。そこで沈細、しごいてもある。もしなくなるなら微脈。細脈は骨まである。少し浮かせると肘側に流れる。そして薄厚。陰虚の要素。陰虚だから津液が灼さえる可能性がある。尺沈は下焦の事、だから下焦のこと聞かないといけない。

患:少し前多便だった。出してもすっきりしない

院:細脈があるんだから、まだたまってるんだ。もし気虚血虚の要素があるならば尺沈はなくなる。

ス:はっきりの脈ではないですよね、気血両虚の脈。

院:浮かせてもない、押してもなくなる脈だ。尺沈に弦もある、下腹は張るか?食べると張るか?

患:あまり感じない。

院:そんな事ない。本人に聞いてもわからないときは押してみろ。

臍下を押す、上腹と比べてもかたいし苦しい。

院:まず足首の症状をとろう。師はいくつかの症状があった時、一つの症状を中心として考える。この症状をなくせばこちらの症状も消える、と。足首の問題が朝と夜にある。なんで朝と夜?からまっているから。足首は動かさないといられない、気鬱。気鬱はどこを治療する?

ス:百会

院:そうだな。一番大切なのは病下にあれば上をとれ、だ。そして寸関尺全てそろうところでとめてみろ、打つところがまばらだろ、気が乱れてる。だから気を調節しないといけない。気が血を運び、血が気を養う。気の乱れがあったなら血を滋養することができない。だからこの患者は手足が末端に行くほど冷たい。ただ痛みとなって出てきてはいない、つまり冷えは行き着く所までは行ってない。だから気を治療する。場所は百会ってよりは気だから、押して気持ちいいところだな。

百会5番針、平補平瀉

院:今、百会に刺すことで気を調整した、陰と陽を調整した、という事。いいか、百会に刺したから気を調節したのではない、穴に針を刺す事が陰陽を調節できる、陰陽の力で気を調節するんだ。そしてさらにどこに刺す?

ス:陽明経。

院:そうだな、そして三里ではない、合谷だ。そしてこの二穴で気を高める、気血両虚なんかには欠かせない穴だ。

ス:脈、骨まではなくなって、その分寸は浮いて太くなった。

院:なぜ太くなった?気が血を養える様になったからだ。気鬱が長引いたら気虚になる、でもそんな症状はない、だから血が気を養う、だな。脈は寸の浮表面硬くはない。柔らかくなる事は胃気が出てきた証拠。でも三本指そろえて関中で保持すると寸が伸びてないことがわかる。合谷にさした理由は尺沈を浮かせること、寸を広げること、でもまだ寸の広がりが足りない、よって合谷平補平瀉

(これで寸沈伸び、さらに柔らかくなる。)

院:尺沈、気鬱の問題が解決されたなら、短脈ではなく長脈になってないといけない。長と短は気の鬱と暢を表す。患者は短ではなくなってるが、まだ関側で打って伸びきらない。ということは百会ねちねち。

長脈になる。お腹押してさっきよりはいいがまだ苦しい。

院:沈弦はなんだ?

ス:痰飲

院:そう、津液の問題。だから弦はなくなったけど、下焦押してまだかたい。痰だぞ、どこだ?

ス:豊隆

院:そう、沈弦はもうないんだから、豊隆に刺すことは最後のツメ、だから細い針でいい。少し響けばいい。

これで下腹押しての苦しさ8~9割良い。

(後日談:左足首動かしたくなるのはなし、またストレスたまって10日後くらいに出たが。朝起きての腰も軽い、げっぷはなくなった)

 

上記はおおまかな流れです。なぜ足首を中心の症状としたか、腰はなぜ軽くなったのか、位数形勢とは、解説すればきりがないので、また次の機会に。